「在宅勤務手当」が、割増賃金の算定基礎から除外される場合とは
厚生労働省から、「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」という通達が出されました(2024年4月5日付)。
この通達では、在宅勤務をする労働者に支給される、いわゆる「在宅勤務手当」について、割増賃金の算定基礎から除外することができる場合が明確化されています。
通達によると、一般的には、「在宅勤務手当」は割増賃金の基礎となる賃金に算入されます。
ただし、「事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合」には、在宅勤務手当は割増賃金の基礎となる賃金には算入されないため、割増賃金の算定基礎から除外することができます。
この「事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される」ためには、労働者が実際に負担した費用のうち業務のために使用した金額を特定し、この金額を精算するものであることが外形上明らかである必要があるとされています。
そのため、
①就業規則等で実費弁償分の計算方法が明示されていること
②その計算方法が、在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法であること
が必要だとされています。
この「合理的・客観的な計算方法」として、以下の3パターンが挙げられています。
(1)国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」で示されている計算方法
(2)上記(1)の一部を簡略化した計算方法
(3)実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法
また、実費弁償にあたりうるものとして、以下の費用が例示されています。
・事務用品等の購入費用
・通信費(電話料金、インターネット接続に係る通信料)
・電気料金
・レンタルオフィスの利用料金
すでに割増賃金の基礎に算入している在宅勤務手当を、今回の通達に照らして割増賃金の基礎に算入しないこととする場合、労働条件の不利益変更にあたると考えられるため、法令等で定められた手続等を遵守し、労使間で事前に十分な話し合い等を行わなければならない点に、注意が必要です。