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着替え時間は労働時間に該当するか?

有名家具小売り大手イケア・ジャパンは2006年の開業以来、制服への着替え時間について従業員に賃金を支払っていなかったことが先日の報道で判明いたしました。会社は事実関係を認めた上で、9月1日から着替え時間を一律5分とし、計10分間を1日の労働時間に含め、着替え時間分の賃金を支払うとしました。

労働時間は、労働基準法に明文規定はないものの、最高裁は作業服の着替え時間が労働時間に当たるかが争われた訴訟の上告審判決(00年3月)で、労働時間を「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義し、使用者から義務付けられた作業服の着脱は労働時間に当たる──との判断を示しました。厚生労働省も同様の指針を示し、【労働時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間にあたる】と明記しています。

就業規則やマニュアルに制服などが明記されている場合、着替え時間は労働時間として扱われます。「従業員は原則として業務中は貸与された所定の制服を着用しなければならない」と明示されている場合、会社からとるべき行動を命令されていると受け取れるため労働時間に該当すると考えられます。また制服着用に従わない場合に罰則が設けられていたり、就業規則などで不利益が定められていたりするケースも黙示の命令があると判断されかねません。着替え時間に関する直接的なルールがないようでも、仕事に影響がある場合は労働時間である可能性が高まります。

一方、あくまでも従業員の都合で着替えを行っている場合は労働時間には該当しません。例えば、職場までの自転車通勤のため職場でスーツに着替えている場合、勤務終了後に遊びに行くために着替えているケースは労働時間には該当しません。また、飲食店などで白いシャツの着用が必要な職場で、着替えも非常に短い時間で済ませることが可能な場合やジャケットを羽織るだけの場合も、ほとんど時間は拘束されません。こうした着替えの場合は労働時間に含めないと整理されるケースが目立ちます。
自宅から制服を着て通勤しても構わない場合は、自宅での着替えは命令下にはなく、また場所の拘束もされていないため労働時間には該当しません。

ただし、制服の着用が必要なすべての業種で通勤時の制服着用が認められているわけではありません。正しく労働時間を把握できるように、会社と従業員の認識を改めて確認した方がいいかもしれません。

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